満月なのでご紹介します。

社会問題(特に動物問題)と読書のブログ

日本の動物福祉にとっての偉大なる一歩!人気漫画『銀の匙』に動物福祉という言葉が登場した!!

ついにここまで来たかという思いです。

 

『銀の匙』の14巻に動物福祉という言葉が登場したんです!

 

しかもちょっとしたセリフじゃなくて、ヒロインにとっての大切な場面で使われたんです!

それについては後ほど詳しく紹介します。

 

興奮冷めやらぬ感じですが、まずは冷静になって動物福祉という言葉がピンとこない人のために動物福祉について紹介したいと思います。

 

動物福祉とは

wikipediaには以下のように書かれています。

動物福祉(どうぶつふくし、英語:Animal welfare)とは、一般的に人間が動物に対して与える痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えるなどの活動により動物の心理学的幸福を実現する考えのことをいう。

 

動物福祉という言葉自体非常に広範な物ごとを捉えた言葉なので、wikipediaでもわかったようなわからないような記載がされていますが、簡単に言えば動物の幸福を追求していく考えです。

 

例えば、動物園に飼育されている動物の退屈を紛らわせるためにアスレチックの施設を作ってあげるのも動物福祉です。

卵を産む鶏を檻の中にぎゅうぎゅう詰めにするのではなく、広々としたところで彼らの本能を十分に発揮できるような環境を整えてあげるのも動物福祉です。

もっと身近なところで言えば、飼い犬の散歩に付き合ってあげるのも広い意味で動物福祉です。

 

正直に言って、大半の人にとって動物福祉という言葉は聞き慣れなかったと思います。

でも、銀の匙では動物福祉という言葉が使われました。

これはこれからの日本の動物福祉にとって大きな意味を持つと思います。

 

これからそれを紹介していきますが、まずは銀の匙という漫画について紹介したいと思います。

 

銀の匙という漫画について

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

 

 

まずは銀の匙を知らない人のために、少しだけこの漫画を紹介していきたいと思います。

作者は何と言ってもあの大人気ダークファンタジー『鋼の錬金術師』を描いた、荒川弘先生です。

 

鋼の錬金術師は一言で言うと錬金術をベースにしたバトル漫画だったのに対し、銀の匙は農業高校の漫画です。

 

繰り返します。農業高校の漫画です。

農業高校を舞台にしたヤンキー漫画ではありません。農業高校を舞台にした農業漫画です。

酪農、農業、馬術。なんでもござれです。

 

一見すると地味なのですが、(いや、何度見ても地味なのですが)、これが面白い。

荒川弘先生自身が北海道の農業高校出身なこともあって、漫画に強いリアリティがあります。

 

何より私自身がこの漫画がすごい!と感じて、ずっとこの本を買っている理由の一つが、物語の初期の段階で動物倫理を扱っていたことからでした。

その内容は、主人公を含む学生たちが自分たちで育てた豚を最後には食べるのかどうかと悩む点です。私は肉を食べるということについて主人公たちと一緒に悩んでみるということは大切なことのように感じました。

 

そしてこの漫画の最もいいところは、シリアスな面とユーモラスな面が非常にいいバランスをとっていることだと思っています。

飼育した豚にしてもそもそも豚丼と命名してるし(食べる気満々じゃないかと言いたくなる)、結局彼らは豚丼を悩んだ末に食べることにするんですが、それを食べた登場人物たちが皆美味しそうに食べるんです。笑えるほどに感激して涙さえ流します。

 

そのバランスが読後の不快感を残さない。

これは荒川弘先生が大切にしていることなんじゃないかなと勝手に思っています。

 

動物福祉の言葉が登場したシーン

では主題の、動物福祉が登場したシーンを紹介します。

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これはヒロインの大学受験の面接の場面です。

ニコニコした女子高生相手に辛辣な面接官のギャップ。このユーモラスな感じが大好きなんです!

 

真面目な話をしますが、この漫画において、このシーンはそこまで大きな意味は持っていないと思います。別にここでのセリフが『動物行動学を中心に学びたいと思っています!』でも『獣医学を中心に学びたいと思っています!』でも物語の本流は大きく変わらなかった可能性があります。(それはもちろん今後の展開次第ですが。)

ただ、荒川弘先生はここで『動物福祉』という言葉を使ってくれました。

そして、多くの読者に『?』を浮かばせたことだと思います。その中でも特にアンテナの強い人は動物福祉について調べるだろうし、もしかしたら動物福祉を大学で学びたいと思うかもしれません。

大げさかもしれませんが、私はそれくらいここでのセリフの選択は日本の今後の動物福祉に非常に大きな影響を与えたのではないかと思っています。

そして荒川弘先生はそのことを狙ったんじゃないかと思います。

 

それに対する面接官のセリフが『人間嫌いなんじゃないの?』はあまりに辛辣で笑ってしまいましたが。笑

  

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ちなみにこの面接官もきちんと動物福祉のことを考えた上での質問でした。

私もこの言葉にちょっと面食らってしまった部分があります。動物福祉の泥臭さを伝えてくれているのだと思います。

 

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ちなみに、それに対するヒロインの返答はちんぷんかんぷんです。笑

 

まとめ

銀の匙が面白すぎるためにちょっと話が脇に逸れましたが、動物福祉という言葉が大人気漫画に出てきたことは本当に嬉しかったです。

この言葉が漫画に出てきたこと自体、日本の動物福祉がある程度成熟してきたことを示しているのではとも思いました。

 

そしてこれからもこの漫画を一つのきっかけに、一人でも多くの方が動物福祉という言葉や考え方を知っていってもらえればもっと素晴らしい世の中になると確信しています。

 

自分が高校生の時にこの漫画を読んでいたらどうだったのかと思うことがあります。

私は、動物が好きなので(人間嫌いな面も否めませんが、、、)、動物のために環境汚染を防ぎたいという思いから、農学部を選びました。その頃には動物に関する学問といえば獣医学部しか知りませんでしたし、獣医学部は偏差値が高いので選択に入っていませんでした。

ただやはり漠然と農学部に入ったので、大学に在学中は動物福祉という考え方にめぐり合うことができないまま、バイオテクノロジーを学ぶことになりました。

それはそれで素晴らしい経験だったのですが、もし学生の頃に動物福祉というものを知っていればと思うことはあります。

 

だから、この銀の匙という漫画が多くの人に届いてほしいなと思います。それもできるだけ若いうちに!なぜなら人によっては人生の選択肢が増えるんだろうなと思うからです。

それだけのパワーを持った漫画だと思います。

 

今、読んでもらいたい漫画ナンバーワンです!

ぜひぜひぜひぜひ読んでみてください!

 

いや、読んでくれ!!!

 

銀の匙 Silver Spoon 14 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 14 (少年サンデーコミックス)