岩合光昭という野生動物カメラマンの日常と生態を知る本
岩合光昭さんの超魅力的な本を読みました。
野生動物カメラマンという本です。
岩合さんといえばNHKの『岩合光昭の世界ネコ歩き』という番組でご存じの方もいらっしゃるかと思います。
言わずと知れた、世界的動物写真家です。
表紙が魅力的すぎて思わず買ってしまったのですがこれが超がつくほど面白い。
もちろん動物の写真も素晴らしいのですが、その写真を撮る過程の非日常加減が半端ないです。
野生動物の写真を私たちに届けるにはここまでしないとダメなのか・・・という真面目な話は置いておいて、この本の魅力をほんのちょっとでも伝えていきたいと思います。
①70枚以上の超魅力的な写真の数々
岩合さんの生態だけじゃなくて動物たちの写真も見ることができます。(当たり前)
本書が210ページ程度なのに対して、写真の数が70枚以上です。
つまり、3ページに1枚くらいの割合で野生動物の写真を見ることが出来ます。
例えば、『子どもライオンが母親の首に手をかけてくっついている写真』や『赤い花畑でくつろぐホッキョクグマの写真』、『80cmの距離で撮影されたパンダの写真』、『雪玉を抱えるニホンザルの子どもの写真』などが掲載されています。
文章だけみて、そこからどれだけ想像力を働かせようとも、絶対に写真には劣ります。
これに関しては見て下さいという他ありません。
百聞は一見にしかず。見ればわかります。
②その写真にまつわる超魅力的なエピソード達
岩合さんはアフリカに1年滞在したり、北極に行ったり、南極に行ったりしながら
野生動物の写真を撮影しています。
その『非日常+野生動物=はちゃめちゃ』です。
『ホッキョクグマに車の窓枠から上体を入れられるエピソード』だったり。
『オウサマペンギンとずっと向き合うことで見つけられた、ペンギンの左右の足の太さの違いに気付くエピソード』だったり。
『ニホンザルを見習って花を食べてみるエピソード』だったり。
本書のタイトルは野生動物カメラマンです。タイトルから考えるとこの本の主人公は岩合さんです。上に挙げた例も岩合さんから見た動物が描かれています。
なので、野生動物よりも野生動物を撮影しているカメラマンの岩合さんにピントが合っているということはきっと意図しているところなのでしょう。
そう考えると次に紹介する野生動物への価値観に紙面が割かれているのも納得です。
③超魅力的な岩合さんの動物観
岩合さんは絶滅危惧種や野生動物の生息地の減少に対してどうにかしなければならないという思いを持っておられます。
野生動物カメラマンとして、
『人としての視点や考え方を取っ払って、自然の中で生き生きと暮らす野生動物のあるがままの姿を見ようよ』
『どんなによく見たって、野生動物の気持ちがわかるわけではない。でもわかろうとすることが大切』
こういう思いを持って活動されているとのことです。
実際、本書では野生動物の様々な行動も紹介されていますが、なぜそれらの行動をするのか解明されていないことも多いです。
一例をあげると、クジラが水面から空中に大ジャンプするシーンが写真と共に描かれています。
科学的な説明では体についた微生物等を落とすためといった説になるのですが、岩合さんはクジラの各人各様で「ただ、海面の上を見たくなっただけかもしれないね」と言っています。
そういう視点ちょっとユーモアに富んだ見方がたくさん出てきます。
参考:生きもののおきて
岩合さんが書いた生きもののおきてという本も読みました。
こちらも岩合さんの野生動物観がはっきりと描かれた本になっています。
『野生動物カメラマン』と『生きもののおきて』の 2冊を読んでよりはっきりしたことは、岩合さんは動物を客観的に見ることが重要と考えているように思います。
究極のところ、動物たちが何を考えているかなんて他人にはわからないのだからという姿勢です。
正直に言って、私はこの考え方は反対です。人が動物の気持ちを推量するとき訓練した人であれば多くの場合正しく推量できているという実験結果もあります。
というか、動物の擬人化は人が動物を理解する上で大切なツールであり、例えば私たちはクジラの気持ちをクジラの言葉で理解することはできないので。
だから岩合さんがどうして客観性にこだわるのかもう少し理解を進める必要があるかとは思います。
だからこそ、岩合さんの考え方だけが正しいとは思ってほしく無いです。というか、世界ネコ歩きの岩合さんはそういう厳しい客観性は持ち合わせていないように思います。
厳しい野生の環境に主観性を排する何かがあるのかもしれません。
まとめ
岩合光昭という野生動物カメラマンを知る上で是非読んでおきたい一冊です。
興味のある方は是非手に取ってみてください。