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【祝日本アカデミー賞】RADWIMPSファンに捧ぐ、君の名は。

2017年1月更新

 

君の名は。という映画をRADWIMPSの2時間のMV(ミュージックビデオ)と評する人がいますがそれは結構的を得ていると思います。

私がそう考える理由はあります。

一つは詳しくは後述しますが、新海誠監督が何かのインタビューで答えていましたが、映画のそれぞれの最も盛り上がるシーンでRADの声入りの4曲を持ってきたという事実。

もう一つは、その盛り上がるシーンというのが映画の起承転結にマッチしているからだと思います。

 

なので、今回は10年来のRADWIMPSファンの私が音楽の観点から君の名は。という映画を紐解いていきたいと思います。

 

RADWIMPSと私

RADWIMPSというバンドがかつて何よりも好きでした。

 

当時聴いていたラジオから『愛し』という曲が流れてきて、圧倒されてすぐにCDを買いに行った記憶があります。

いつも学校から帰ったらその当時はあったRADWIMPSの公式HPのファン掲示板を見たりとか、あのころのエネルギーってすごかったなって思います。

当時は掲示板というものがどんなアーティストのHPにのあったんですよ。

ただ、人気が出てくるにつれて掲示板も荒れ始めて、その掲示板は掲示板の形を保てなくなってしまい、ファン同士のレスポンスが出来なくなって、応援メッセージを書き連ねるだけの場所になっちゃったりしました。

それまでは、すごくいい場所だったんですよ。洋次郎のお父さんが『洋次郎、頑張れよ』とかって書きこんでいたり。

 

こういうことを書くと年をとったなって自分で驚いていますが、きっと私がファンを始めたのは10年前くらいからです。20歳より若かったです。始めてRADで買ったCDはRADWIMPS2~発展途上~で、人生で初めて参戦したライブは心斎橋で200人くらいでやってたRADWIMPS3のツアーで。そのときの洋次郎はテンションあがって最前列の男の人にキスしてたなーとか。笑

そして間違いなく人生で一番聴いた曲は『ふたりごと』で。大げさじゃなく何百回と聴きました。

 

未だに私の人生の5%くらいはRADが占めているんじゃないかと思います。

死ぬ時でも1%くらいはRADが占めているかもしれません。 

 

でも、RADを死ぬほど聴いていたのはRADWIMPS4までで、アルトコロニーの定理はそこそこ聴いて、絶体絶命はちょっと聴いて、×と○と罪とはほとんど聴かなかったです。

 

どんどん音楽的な技術が上手くなっていくのは感じたんだけど、自分が好きなRADからは離れて行ってしまったんだと思います。多才で色んな曲を作れるRADですが、私はやっぱりRADの歌うラブソングが好きなんです。そこから離れて行ってしまうRADから私も徐々に離れて行ってしまいました。

 

 

そんなこんなで10年経って、君の名は。が公開されました。

 

公開前からRADの楽曲が映画の中で複数使われているということは知っていました。新曲も含めて。RADがどんな歌を歌うのかわからなかったですが、RADWIMPSが音楽を担当する映画なら見なきゃだめだと思いました。だからこそ新曲は絶対映画館で聴こうと思ってそれまで『前前前世』は聴くのを我慢していました。どんな風に楽曲が使われているのかも知らなくて、昔の曲をうまい具合に映画に載せていることもするんだと思っていました。秒速5センチメートルにおける山崎まさよしの『One more time, one more chance』のように。

 

でも、それは違って、全部書き下ろしの新曲でした。

それどころか挿入されているインストを含む全27曲の全ての音楽にRADが立ち会っているとのことでした。

いやー、震えた。久しぶりの洋次郎の声にも。かつてあほみたいに聴いたクワのギターリフも。武田の心地いいベースも。

だって、映画の登場人物がしゃべっているのに、それと同じ声量で洋次郎の声が聞こえてくるし、しかも4曲も劇中で流れるし、それもめっちゃいいシーンだし。

なにより、僕が好きだった頃のRADの感じがしたし。

 

まさに、RADWIMPSファンに捧ぐ映画でした。

 

新海誠とRAD

本作をつくった新海誠監督もRADファンだそうです。

実は私2回映画を見に行きました。1回目はまっさらな状態で。2回目はその前に小説も読んだし雑誌のインタビューも読んだし、HPに公開されている様々なインタビューを見てから映画に行きました。

2回目を見るときの気持ちは、もはや観客というよりも制作者寄りの気分でした。

 

で、どっかのインタビューの中で知ったんですが、新海誠監督がRADで一番好きな曲が『ふたりごと』という事実で、『ふたりごと』のような映画が撮りたかったってことです。

俺が木星人で君が火星人だろうと

君が言い張っても

俺は地球人だよ いや、でも仮に木星人でも

たかが隣の星だろ

一生で一度のワープをここで使うよ

 (ふたりごとより) 

映画を見た人にはわかると思うんですが、今作はまさにふたりごとのような映画になっていると思います。

距離なんてまったくたいしたことが無いと言い切れるようなまっすぐな思いがこの映画にはあります。

それは作中で瀧と三葉が宮水で会うシーンで、

滝が「ホント、大変だったよ。お前すげえ遠くにいるから。」 

と笑顔でいう場面でも感じられると思います。

 

また他のインタビューの中ではRADの楽曲に刺激されて作中の描写を変えていったとも言っていました。

例えば、瀧と三葉が互いの体に罵詈雑言を書くこととかは当初想定されていなかったそうです。

 

でも、先にも書きましたが数あるインタビューの中で一番うれしかったのは映画のそれぞれの最も盛り上がる場面にRADの声入りの4曲を持ってきたという事実です。

洋次郎のブレスすら映画にとって必須なものに感じたし、映画のために間奏も細かい時間も作りこまれていると感じました。ただそれと同じくらい映画もまた楽曲のためにあろうとしていたことに感動すら覚えました。

 

これからそれらの楽曲と場面の紹介をしていきたいと思います。

 

作中曲と君の名は。

起:夢灯篭

映画が始まってほんの数分のうちに流れ出すのが夢灯篭という曲です。

美しい映像と共に聞こえてくるモノローグのセリフは以下の通り。

朝、目が覚めるとなぜか泣いている。そういうことが時々ある。見ていたはずの夢はいつも思い出せない。ただ、ずっと何かを・・・誰かを探している。

そういう気持ちにとりつかれたのは多分あの日から。あの日、星が降った日。それはまるで、まるで、夢のようにただひたすらに美しい眺めだった。

この瀧と三葉によるセリフとほぼ同時に洋次郎の息遣いが聴こえ、夢灯篭が始まります。

なにかが始まるような予感を多分に含ませた曲調、そして柔らかさ。

この曲を聴いただけで鳥肌が立ちました。

なにか大きな映画が始まるという大きな期待感を感じます。

 

一番好きな部分はここ。

5次元にからかわれて それでも君を見るよ

また「はじめまして」の合図を決めよう

君の名を 今追いかけるよ

(夢灯篭より) 

5次元の本当の意味はわからないですが、作中のことを考えると3次元空間に時間の要素と位置的飛躍の要素を組み込んだものと解釈しました。

この映画の本質みたいなものを5次元にからかわれると言い換える洋次郎の才能ににやりとさせられます。

 

承:前前前世

流れるのは、二人の体が入れ替わっているのが夢ではなく現実に起こっていると知ったタイミング。

瀧「俺は夢の中でこの女と---」

三葉「私は夢の中であの男の子と---」

二人「入れ替わってる!?」

 

このセリフの直後に皆さんも聴いたことがあるであろう、前奏が始まる。

ここで僕超鳥肌。

だって、私が高校生の頃死ぬほどきいたあの桑のギターリフそのものだったから。

あのギターサウンドを聴くだけで間違いなくこれがRADの楽曲だって言い切れる。

そして多幸感ある歌詞、いがみ合いながらも幸せそうな瀧と三葉、洋次郎の歌声。

私は前前前世が流れているこの約5分が映画の中で一番好きで、この日常だけを描いた作品を描いてほしいとすら思える。

 

ストーリーとしても二人の主人公が入れ替わりを夢ではなく現実と認識した場面から物語は大きく進行し始めるのでまさに起承転結の承にふさわしい場面での前前前世だと思います。 

 

あと、サウンドトラックに入っている『前前前世』と映画で流れるそれは歌詞がちょっと違う。

 

サウンドトラックに収録されている2番の入り方は、

どっから話すかな 君が眠っていた間のストーリー

何億 何光年分の物語を語りにきたんだよ けどいざその姿この眼に映すと

 映画では、

私たち越えれるかな この先の未来数え切れぬ困難を
言ったろう 二人なら笑って返り討ちにきっとできるさ

君以外の武器は他にはいらないんだ

サウンドトラックに収録されているのはmovie ver.とありますが、多分映画で使用されている方はこれから発売されるRADWIMPSのオリジナルアルバムに収録されるのだと思います。

(実際そうでした。)

 

僕の印象では映画で使われていない方の歌詞の方が映画の内容にマッチしているように思いました。

ふたりとも同じ方向を向いてるのは間違いないんだけど、二人で一緒に頑張っているイメージは映画のこの段階では全くなかった。

この先の困難を示唆したかったのかもしれませんが、この場面では多幸感の溢れる「どっから話すかな...」って歌詞の方が良かったかもなと個人的には思います。

 

転:スパークル

かたわれ時が終わり、瀧の前から三葉が姿を消すその瞬間からスパークルは流れ始めます。

二人の物語が一旦終了する場面。起承転結の転であり結であるこの場面はまさしくこの映画のピークと言えるでしょう。

まだこの世界は 僕を飼いならしてたいみたいだ

望み通りいいだろう 美しくもがくよ

 (スパークルより)

この歌いだしとともに瀧の三葉を忘れまいとする痛切な叫びも始まります。

「君の名前は、三葉」

「大丈夫、覚えてる。」

「三葉、三葉、三葉、みつは、みつは。名前はみつは。」

「君の名前は...」

「...お前は、誰だ?」

「大事な人、忘れちゃだめな人、忘れたくなかった人!」

「君の名前は?」

ここで瀧のパートが終わり、次は宮水の人々を救う三葉のパートに移ります。

瀧から三葉にパートが変わってもこのスパークルは流れ続けており、瀧の世界と三葉の世界が決して断絶していないことを表しているようにすら思います。

 

そしてこの曲のピークとともに、作中では隕石によって宮水の大半が消滅します。

運命だとか未来とかって 言葉がどれだけ手を

伸ばそうと届かない 場所で僕ら恋をする

時計の針も二人を 横目に見ながら進む

そんな世界を二人で 一生 いや、何章でも

生き抜いていこう

 

洋次郎が何を考えてこの曲を作ったのかなんて思いも及びませんが、この曲はどこまでも二人だけの世界を描いているように思います。

世界と対峙し、運命や未来といった場所や時間からも隔絶して二人で生き抜いていくこと。

このとんでもないラブソングこそが私が大好きだったRADWIMPS。

昔のRADのような直接的なラブソングじゃない。

でも、好きな人を堂々と神とすら呼んでしまうかつてのRADの姿を垣間見ることが出来ました。

 

いやー、映画でもここが一番泣きました。笑

 

結:なんでもないや

エピローグで流れる曲。映画としての本当に最後の場面。

君のいない 世界にも 何かの意味はきっとあって

でも君のいない 世界など 夏休みのない 八月のよう

君のいない 世界など 笑うことない サンタのよう

きみのいない 世界など

(なんでもないやより)

 

どなたかのブログの考察で読みました。

従来の新海誠の作品同様に「君の名は。」のエピローグにおいても登場人物たちはその主体性をなくし、風景にまぎれてしまう。と。

たしかにその通りで、瀧と三葉のやり取りや、宮水を救うためのキャラクターのパワーの強さを考えると、エピローグはいささか物足りなさを感じてしまいます。

でも、それが新海作品の魅力の一つなのです。

そしてそれに寄り添うような「なんでもないや」という曲。

 

この曲が演出するのは圧倒的な余韻だと思います。

映画を観終わって、席を立つことができないということがこの映画を見た人に共通して起こった現象のようですが、この曲が担う部分が大きいと自信をもって言えます。

是非、その余韻に映画館で浸ってほしい。

起承転結の結。このなんでもないやという曲で映画が結ばれます。

 

RADWIMPSと君の名は。

「君の名は。に使う楽曲を考えるにあたって、今一度恋愛の歌を考えるきっかけになった。やっぱり、ずっと音楽をやってきたら歌うことは少なくなってくる。けど、そういう壁みたいなものを突き破れる一作になった。」

みたいなことを何かのインタビューで答えていました。

 

私もそう思います。

私が感じてきたのは、洋次郎はRADWIMPS4以降まっすぐなラブソングを避けてきたということ。

それがだめなこととは思いませんが原点から離れて行ってしまったように感じていました。

でも、今回の君の名は。の楽曲たちを聴いて確信しました。やっぱりRADにはラブソングが似合うと。

 

なぜなら、RADの曲は基本的には一人の女性のためだけに歌われたものだったし、その世界は君と僕の二人だけでできていたから。

君と僕が出会えたこと人は奇跡と呼んでみたいだけ

だって君は世界初の肉眼で確認できる愛地上で唯一出会える神様

もしも本当にもしも君がぼくのこと思ってくれてたら

(順に、ふたりごと、有心論、もしもより)

 

最後に、私がRADから離れてしまった5年くらいの間もファンでい続けてくれた多くのRADファンの方に感謝したいです。

彼らを支える今のファンがいなければ今の僕が本当の意味でRADに再会することは出来なかったかもしれないので。

 

今の僕からも10代だったかつての僕からも感謝したい。

 

あー、10年ぶりにライブのチケット取って、新しいRADのファンとRADWIMPSに会いに行こう。

君の名は。(通常盤)

君の名は。(通常盤)

 

 

追記:RADWIMPSと人間開花

で、そのままの勢いでニューアルバムの人間開花も買っちゃいました!

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なぜ君の名はに引き続きCDを買ったのかというと、何かのインタビューで洋次郎が『行き詰っていた感があったけど、君の名は。の音楽制作に携わって新しい領域に踏み出せたと思う。』といったニュアンスのことを言っていたから。

 

私がRADWIMPSの音楽を聴いていた頃って彼らも20代前半だったし、そりゃ伝えたい事も変わりますよね。

一番感じていたのはストレートな恋愛の音楽が減ってきたなということ。

それに代わってメッセージ性の強い音楽が増えていている印象を受けますが、実は2004年にリリースされた2ndシングルの祈跡なんかも非常にメッセージ性が高い。

生きたくても生きれねェやつがいつがいるんだって

そんなんも考えないで生きてる気になんなって

(祈跡より引用)

 

少し話がそれましたが、新領域に到達したという彼らの音楽に期待して人間開花というアルバムを買いました。

 

聴いた感想なんですが、やっぱり僕はRADWIMPSが好きで、ヘビーローテーションしまくりです。会社の行き帰りの車の中は常に人間開花です。

ただ、『こんな斬新でそれでいて素晴らしい曲ってRADWIMPSにしか作れないよな』っていうのは減ってきちゃったなという印象です。

人間開花というアルバムの中では、斬新でかっこいい曲っていうのは『前前前世』と『スパークル』かなと思います。

メッセージ性の強い曲としてはMVも作られている『光』だと思います。というかMVが同性愛っぽい女の子が出てきていて、MVこそメッセージ性が多分に含まれていると思います。

www.youtube.com

 

今にして思うとRADWIMPSはミクスチャーロックっぽい音楽と斬新な歌詞として音楽界のパイオニアだったんじゃないかと思います。善し悪しはともかく最近のロックバンドが多様化しているのもRADWIMPSの影響があると思います。

実際、今話題の米津玄師もRADWIMPSに影響されていると公言していますしね。

ちなみに本アルバムに収録されている『アメノヒニキク』はサカナクションの音楽に聴こえて仕方ありません。

 

正直、昔のRADWIMPSが好きな私としては少し物足りない感じもありますが、相変わらずクワのギターリフも相変わらずかっこいいし、武田の奏でるベースラインもスラップもやっぱり凄いし、洋次郎も確実に歌が上手くなっているし。

買って間違いない1枚だと思います。

人間開花(通常盤)

人間開花(通常盤)

 

 

ただ、前前前世とスパークルについては、『君の名は。』に収録されているmovie ver.の方が絶対にいいです。

前前前世はmovie. verの方が全体的にすっきりしています。

スパークルはmovie ver.は約9分の曲で少し長いし、その半分くらいがボーカルの入っていない演奏ですが、そのボーカルのない時間があるからこそ最後の鳥肌さえ立つメロディに繋がるのだと思います。その長さを心地よいと感じられる人にはmovie ver.の方がいいです!

前前前世とスパークルが好きな方は『君の名は。』のアルバムをおすすめします。

君の名は。(通常盤)

君の名は。(通常盤)

 

 

ちなみに、私にとっての永遠の史上最高のアルバムはRADWIMPS2~発展途上~です。

RADWIMPS2~発展途上~

RADWIMPS2~発展途上~

 

愛し、ヒキコモリロリン、俺色スカイ、なんちって。

何回聴いたかわかりません。

ヒキコモリロリンは最近のライブでも演奏してくれているみたいなので是非聴いてみてください。

奇抜な演奏と洋次郎の歌詞が最もマッチしている曲だと思います。

 

あー、ツアーのチケットが当たりますように!

 

2016年12月追記:チケット外れました。。。

 

日本アカデミー賞受賞

2017年1月、第40回日本アカデミー賞が発表されました。

優秀アニメーション作品に『君の名は。』

優秀監督賞、優秀脚本賞に『新海誠』

優秀音楽賞に『radwimps』

がそれぞれ選ばれました。

 

と言われても正直よくわかりませんが。

ボブディランがノーベル賞を取ったときと同じくらい、優秀音楽賞にロックバンドが選ばれるということに違和感を感じます。

これでradwimpsの何がかわるの?と言われてもきっと何も変わらないと思いますが。

3月3日に授賞式があるようなので、そこで何を語るのか楽しみにしたいと思います。

後は、前回受賞者のサカナクションとのやり取りもきっとあると思うので、新しい音楽を作り続ける二つのバンドが何を語りあうのか楽しみにしたいと思います!