満月なのでご紹介します。

社会問題(特に動物問題)と読書のブログ

池田晶子『14歳からの哲学』は考える能力を身につけるための素晴らしい本だった。

八重洲ブックセンター本店という東京駅を代表する私の大好きな書店があります。

 

以前そこを訪れた際に没後10年池田晶子ブックフェアという催しが開催されていました。

 

社会科学に関心のある私としては池田晶子という人がどんな人かそのときから気になっていたので、14歳からの哲学という本を購入しました。

その本が素晴らしかったので今回は紹介したいと思います。

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14歳からの哲学入門

池田晶子氏は哲学者、文筆者として紹介されることが多いですが、なんといってもその特徴は若者に向けて書かれた平易な文章です。

本書は14歳に向けて書かれた本ということだけあって、非常に優しい言葉遣いで語りかけるように書かれています。。

しかしながら、書いてあることは決して子どもを侮ったようなことではありません。子どもも立派な大人だということを考えながら書かれた本ということがよくわかるような内容になっています。

おそらく池田晶子氏が望んだのはこの本を100%理解することじゃなくて、この本を通じて普段考えないことを意識するようになることだと思います。

それを本文を紹介しながら伝えていきます。

 

メディアと書物

(テレビについて)人が死んだりビルが倒れたりしている映像を見ることは、君にとってどんな意味があるかしら。

衝撃的、刺激的、つまり見たいからみているということだね。これは、テレビが無かった時代に人がよその火事を見に走る心理と同じ。つまり野次馬根性だ。でも、他人の不幸を刺激にするのはあまりいい趣味じゃない。その証拠に、(刺激的な番組の)次に始まる下品なお笑い番組なんかを見て、平気で人は笑ってるだろ。戦争からお笑いまで、全部が一律に電波で流されるから、人は、大事なことと大事でないことの区別がつかなくなっちゃうんだ。

情報は変化するものだけれども、知識というのは決して変化しないもの、大事なことについての知識と言うのは、時代や状況によっても絶対に変わらないものだということだ。 

賢い人々が考え抜いてきたその知識は、新聞にもネットにも書いていない。さあ、それはどこに書いてあると思う?

古典だ。古典という書物だ。いにしえの人々が書き記した言葉の中だ。何千年移り変わってきた時代を通して、全く変わることなく残ってきたその言葉は、そのことだけで、人生にとって最も大事なことは決して変わるものではないということを告げている。それらの言葉は宝石のように輝く。言葉は、それ自体が、価値なんだ。だから、言葉を大事に生きることが、人生を大事に生きるということに他ならないんだ。  

言葉の価値を知らずにいるから、最近は人々が本を読まない。 

しっかり考えて、賢い人間になりたいのなら、やっぱり本を読むのがいい。むろん、どんな本でもいいというわけじゃない。本物の人が書いた本物の本だ。メディアの策略で流行になっているような本は、まず偽物だ。だまされないように、見る目を鍛えて。

絶対に間違いがないのは、だからこそ、古典なんだ。古典は、考える人類が、長い時間をかけて見抜いた本物、本物の言葉なんだ。消えていった幾銭の偽物、人の心に正しく届かなかった偽の言葉の群の中で、なぜその言葉だけは残ってきたのか、はっきりとわかるとき、君は、いにしえの賢人たちに等しい知識を所有するんだ。これは、ネットでおしゃべりするなんかより、はるかに素晴らしいことじゃないか。

 ※14歳からの哲学入門より引用

 

これらの言葉の中で私が最も印象に残っているのは『戦争からお笑いまで、全部が一律に電波で流されるから、人は、大事なことと大事でないことの区別がつかなくなっちゃうんだ。』という言葉です。

人が大事なことと大事でないことの区別がつかなくなってきているのかどうかはわかりませんが、これはテレビの大きな特徴で、本とは明らかに異なると感じました。

YOUTUBEなんかも断続的なのかもしれませんが、HIKAKINを見て、悲しいニュースを見て、はじめしゃちょーを見て、っていうことはおそらくないだろうから、やっぱりテレビだけが明らかに異質です。

その中でもやっぱり本が他のメディアと異なるのは時間の篩に耐えてきた古典があるということです。きっとYOUTUBEや他のメディアも時間の篩には耐えるだろうけど、100年後にも見返される映像ってほとんどないのかもしれません。

 

そういった意味を含めて、池田晶子氏は長く受け継がれてきた本を読んで、その知識を得て欲しいと言ったのだと思っています。

 

僕自身、例えばドストエフスキーなんかを読むと何十年も前に生きた名も無いロシア人たちと心を通わせているような、そんな気持ちになったりもします。 

 

おわりに

この本は難しい哲学者の難しい言葉が出てくるわけではなくて、生きていく上で重要なこと考えることを哲学と呼んでいて、そのことに本気で対峙した本です。

本書を手に取れば自分一人では考えつかなかった考え方や、素晴らしい言葉に出会うことができます。

子どもだけでなく、大人にとってもたくさんの発見がある本です。ぜひ読んでみてください。

14歳からの哲学 考えるための教科書

14歳からの哲学 考えるための教科書