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【感想/どうぶつの国】弱肉強食の世界を描いた問題作【雷句誠】

動物たちのことを考えるヒントを得るために私が大好きな雷句誠さんの漫画読みました。読んだ感想としては、ガッシュに負けず劣らずの非常に素敵な漫画で、ガッシュのように主人公たちと泣いたり笑ったりしながら必死に最後まで読むことが出来ました。

是非、皆様にも読んでいただきたいと思いここに紹介させて頂きます。

今更紹介するまでもないですが、まずは作者の紹介から。

 

雷句誠とガッシュ

私が紹介するまでもなく超有名な漫画家さんで代表作はこれまた超有名な『金色のガッシュ!!』です。

金色のガッシュ!! (1) (少年サンデーコミックス)

金色のガッシュ!! (1) (少年サンデーコミックス)

 

私自身、ガッシュが大好きで数えきれないくらい何度も読みました。

私にとってのガッシュの至高の名言は1巻の「清麿が変わったんじゃない!!!清麿を見る友達の目が変わったんだ!!!清麿が実際何をした!!?今日、学校に来た清麿が何をした!!?おまえのように誰かを傷つけたか!?おまえみたいに弱い者から金を奪ったか!!?学校に来なくていいのはおまえの方だ!!」です。

弱いガッシュが清麿をいじめていた強い不良に立ち向かう非常に印象的なシーンです。

 

最大の特徴『不条理なものに対する怒り』

上述したように、雷句先生の最大の特徴はなんといっても不条理なものとそれに対する強い心だと思います。

 

もちろん漫画家を含むすべての表現者にとって、不条理なものを描くことは特別なことではありません。

簡単な例を挙げれば漫画ワンピースにおけるアーロンパークでのナミの処遇や、小説ハリーポッターにおけるハリーのダーズリー家での奴隷のような待遇があるかと思います。

これらのテーマが表現者に好まれるのは不条理なものを乗り越える描写をすることで、正義の勝利や登場人物の成長をえがくことが出来るからだと思います。また、他方では表現の世界において不条理なものを乗り越えることで、現実世界においても不条理なものに対抗する気概を見せ、そのうえで価値観の転覆を狙っているのではないかと思います。

繰り返しますがこれらの理由から不条理なものは良く選択されるテーマです。

 

ただ、その不条理なものに対する強い心の描写において雷句誠の右に出るものはいないのではないかと思います。

実際に、漫画を読むと雷句誠の描くシチュエーションには特別なものはありません。シチュエーションに重きを置いているのではなくそのシチュエーションにおける言葉の選択や、その場面に登場するキャラクターの表情の描写がとんでもなく素晴らしいと思います。

例えば、ガッシュの登場人物も動物の国の登場人物もよく涙を流します。それが表情と描き方と相まって全く嘘っぽくないです。この嘘っぽさのなさが感情移入しやすくさせているのだと思います。

 

話がそれますが、他に不条理なものを描くのが上手いのは『うしおととら』の作者の藤田和日郎だと思います。(雷句誠は藤田和日郎のもとで6年間アシスタントを行っていました。)

うしおととら 完全版 1 (少年サンデーコミックススペシャル)

うしおととら 完全版 1 (少年サンデーコミックススペシャル)

 

  

雷句誠のこともガッシュのこともたくさん紹介したいのですが、それだけで一つの記事以上になってしまうので、ここからはどうぶつの国のことを描いていきたいと思います。

 

雷句誠、長編2作目『どうぶつの国』

今作どうぶつの国でも不条理なものとそれに向き合う強い心が描かれます。

それは、肉食動物と草食動物の関係。つまり、肉食動物は生きるためには他者の命を奪わなければならない。一方で草食動物にとってはただ平和に生きたいと願うだけにも関わらず死と隣り合わせの日常。

どうぶつの国の舞台はこの地球上でもありふれた弱肉強食の世界です。

 

ただ、この漫画で特筆すべきはその世界をクソッタレと言い切る肉食動物がいることです。

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引用:どうぶつの国1巻

 

その言葉を吐くのはクロカギという名の大山猫です。

大山猫は肉食動物であり、クロカギ自身もかつては動物をその牙や爪で殺し食べていましたが、あることをきっかけに動物を食べることをやめました。

その後、人知れず他の山猫から本来エサであるタヌキを守り、タヌキがとる魚を奪って動物を殺さないようにしていました。

自分自身でもなぜそのようなことをしているのかは分からないけれども、このクソッタレな世界にケンカを売って、何かが変わるのを待っていたと言います。

 

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引用:どうぶつの国1巻

 

ここには不条理なものに対する諦めはありません。諦めるくらいなら徹底的にあらがう強い心を見せる。ときには怒りをぶつける。ここに雷句誠の本領を感じます。

所詮フィクションと笑われるかも知れませんが、私はこの言葉にすごく励まされました。単純ですがなにか不条理なものに相対したときにはケンカを売れるほどの強い心を持つ必要があると教えられました。

 

さて、作中のクロカギですが、全ての動物と話をすることができる『ヒトのタロウザ』と出会い、クソッタレな世界を変革するための旅に出ます。様々な思いを持つ肉食動物や草食動物に出会い、様々な苦難を乗り越えつつ殺し合いのない世界を目指します。

 

物語の序盤はこのような内容です。

ただ、物語の途中から不条理なものが少しずつ変容していきます。

私自身の感想としては、動物界の弱肉強食にとことん向き合ってほしかったので、中盤からの展開には少し残念に感じてしまいました。

 

ただ、物語序盤は間違いないです。

ガッシュで多くの人を魅了した熱さだったり、不条理に対する強い心が存分に表現されています。

 

だからここまで読んでくださった方に1つだけお願いさせてください。

 

この漫画そのものや弱肉強食に対してほんの少しでも興味を持っていただけた方は1巻だけでもいいので読んでみてください。雷句誠の表現力に導かれて、世界の見え方きっと変わると思います。

私からのお願いはそれだけです。

 

まとめ

今回この漫画を読んだ動機も動物福祉を考えるということからでした。実際に良い表現や良い言葉に出会ったことで今後物事のの見え方が少し変わってくるのではないかと思います。

また、肉食動物と草食動物の関係性についても考えてみたいと思いました。なぜ肉食動物は草木を食べて生きることができないのか。動物が他の命を奪う時に何を思うのか。

長い時間をかけて肉食動物から草食動物に変わったパンダという生物も存在します。この星に暮らす上で、これらのことにも目を向けていきたいと思います。何か面白いことがあればまたこのブログで紹介したいと思います。

 

繰り返しになりますが、是非1巻だけでも手に取ってみてください。1巻だけならば動物福祉とか関係なく本当に誰にでもお勧めできる名作となっています!

どうぶつの国(1) (少年マガジンKC)

どうぶつの国(1) (少年マガジンKC)

 

 

ちなみにガッシュの好物は魚のブリです。普通は漫画の主人公は肉を好物に選ばれるような気がしますが、ガッシュの好物はブリです。

どうぶつの国においても肉に変わる食料として魚が重要視されています。

雷句誠にとっての肉や魚に対する考え方の一端にガッシュの好物がヒントを与えてくれているような気がします。

 

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