満月なのでご紹介します。

社会問題(特に動物問題)と読書のブログ

【感想/夜の国のクーパー】戦争の恐怖を子どもたちに知ってもらうために【伊坂幸太郎】

これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。

 

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

夜の国のクーパー (創元推理文庫)

 

 久しぶりに伊坂幸太郎の本を読みました。

 

というよりも久しぶりに小説を読みました。

 

 

学生の頃は、電車で往復2時間弱くらいを毎日読書してましたので、

年間100冊くらい(主に小説)を読んでいました。

 

しかしながら、社会人になると車通勤になってしまい、

読書をする暇がなくなってしまったこと。

また、勉強に恋焦がれて、図鑑なんかを読むようになってしまったことから、

小説からは本当に離れていました。

 

伊坂幸太郎はもともと大好きだったのですが、

趣味が、司馬遼太郎や池波正太郎にシフトしてしまったことから、

少し距離を置いていました。

 

 

さて、これまでは半分自己紹介。

ここからが感想となります。

 

この『夜の国のクーパー』という本は、

戦争の恐怖を子どもたちに考えてほしいと思って

書かれた本だと解釈しています。

 

登場人物(猫、ネズミを含む)は、

・主人公(猫のトムから戦争についての話を聞かされる聞き手)

・猫のトム

・ネズミ(中心のネズミ、外のネズミ)

・複眼隊長

・冠人

 

など、まーわかりやすい名前ですね。

伊坂作品はどれもそうですが。

(ちなみに、トムとジェリー的場面も存在します。)

 

この作品の上手いところは、人間に対して猫が話をするという点です。

人間同士の会話になると利害関係であったり、腹の中の一物をどうしても

考えてしまいますが、相手は猫です。

 

作中の猫は、無邪気、無力、無知といったように描かれています。

 

具体的には、

無邪気はそのままにどの猫も素直です。

無力というのは、猫は人間に単なる観察者として認識されており、

無知というのは、人間世界のことをあまり知っていません。(当然ですが)

 

この辺りが、人間の子どもをイメージしているのではないかと

勝手に想像していました。

そして、猫は猫なりに様々なことを考えます。

 

作中では、人間同士の戦争が起きていますが、

猫世界でのハプニングとしては、ネズミに話しかけられるという点があります。

 

猫もネズミも会話が出来るとは思っていなかったのですが、

外部から来た猫により彼らはコミュニケーションがとれるということが判明しました。

その中で、ネズミは猫は台風や地震と同様に天災のようなものであると

認識していたとのこと。

 

その後のネズミと猫との取引は

この本における重要なメッセージが込められています。

 

 

あとは、国の長老によって語られる戦争の悲惨さなんかは、

実にありふれた分かりやすいものです。

 

しかし、そこにミステリー要素とファンタジー要素と

猫視点というものを取り入れることで、

新たな戦争に関する小説が誕生したのではないでしょうか。

(ミステリーの部分とファンタジーの部分は割愛します)

 

また、途中に書きましたが、基本的に猫は無知なため

語られる言葉は非常に分かりやすいです。

 

この辺りに非常に気を使われているため、

伊坂幸太郎による、子どものための、子どもに考えるきっかけを与える、

素晴らしい小説になったのではと思います。

 

読んで損はしない小説ですので、興味のある方は是非ご一読ください。

 

 

伊坂幸太郎の別作品もレビューしましたので、こちらもおねがいします。

caffeyne.hatenablog.com

 

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