まずはこちらのニュースを読んでみてください。グロい画像は出てきませんので!
アメリカの最王手のスーパーマーケットが卵をケージフリーのに切り替えるとのニュースです。
めちゃくちゃ素晴らしいニュースなんですが、一方で、『ケージフリー?なにそれ?』という方もおられると思います。
そこで今回は少しずつ解説していきたいと思います。
- 平飼い飼育の卵って?
- バタリーケージの何がダメなの?
- 海外ではバタリーケージの廃止運動が進んでいます。
- 日本でもケージフリーの動きは拡散できるのか。
- スーパーのヤオコーさんが平飼い卵を陳列してくれました!!!2016年追記
- 卵の紹介!!!
- あいだのたまごって???
- まとめ
平飼い飼育の卵って?
バタリーケージという省スペースで産卵を行わせるケージ(檻)を使用せずに育った鶏の卵のことです。バタリーケージと比較して自然に近い形で育てられた鶏の卵です。
つまり、バタリーケージ卵じゃない卵≒平飼い飼育の卵という図式になります。
完全イコールではないと思うのですが、先進国などで進められている集約的生産方法という考え方の中では上記の数式はほぼ100%成り立つと考えて良いです。
専門的な言い方をするならば、平飼い飼育の卵とは動物福祉に考慮した飼育方法で産まれた卵のことです。
バタリーケージの何がダメなの?
1羽あたりのスペースがA4のコピー用紙以下だと言われています。
産卵鶏は2年くらいで廃棄されるので、産まれてから2年の間の全生活をそのあまりにも狭いスペースで生きることになります。
それがバタリーケージです。
ちなみに日本の卵の90%以上がバタリーケージで生産されているといわれています。(2007年畜産技術協会調べ)
海外ではバタリーケージの廃止運動が進んでいます。
最初のニュースで紹介した米ウォルマートもそう。
もう少し大きなスケールで言うと、2012年1月1日EUが産卵のためのバタリーケージの禁止という規制を実施しました。
また、アメリカとカナダのマクドナルドが、バタリーケージ卵の廃止を発表。
「今後10年かけてケージフリー卵に切り替える」そうです。
日本では外食産業でこのような動きはまだないようですが、日本の卵の90%以上がバタリーケージ卵なのに対して、海外では動物福祉が進んでいると言えます。
日本でもケージフリーの動きは拡散できるのか。
日本の卵の生産量とは?
平成25年の鶏卵生産量は252万1,974t(農林水産省より)
90%の227万tがバタリーケージ卵。
10%の25万tがケージフリー卵。
ちなみに、卵は96%を自給しているとのことなので、この比率がそのまま流通の比率になると考えて問題ないと思われます。(日本養鶏協会より)
日本の卵の消費量って実はすごい。
日本人は「たまご大好き」。国民一人あたりの消費量はメキシコに続いて第2位(2011年実績、出典IEC)で、年間平均320個以上を消費しています。玉子焼き、目玉焼き、親子丼、玉子豆腐などのたまご料理だけでなく、パン・ケーキ、マヨネーズ、ハム・ソーセージ、かまぼこ・ちくわなど各種加工食品の原料としても使用されています。
その用途別使用割合は、おおよそ家庭用向けパック卵50%、業務用向け箱玉30%、加工メーカー向け原料卵20%です。(キューピーHPより)
家庭向けが非常に大きな割合を占めていることが分かります。消費トン数はわかりませんでしたが、卵はほとんど輸出できていないようなので、生産量≒消費量と考えてほぼ間違いないと思われます。
つまりは、私たち一人一人がどのような卵を選ぶのかによって、鶏たちの生活が選ばれるといっても過言ではありません。
日本はケージフリーに移行できるか?
ここまで生産量と消費量の関係を見てきました。
現状だとケージフリー卵の生産量は消費量に全く届かず、移行は難しいと思われます。
なぜかということを考えていきましょう。
まず消費者側(=市場)の問題を考えます。
ケージフリーの卵は生産効率がバタリーケージを使用した場合よりも低いので、結果として高価格になります。後ほど紹介させていただきますが、私が買っている平飼い卵は10個入りで約400円。これが高いのか、それともあまり安くないと感じるのかは人それぞれですが、一般的に流通している卵の市場価格を考えるとやはり高いと言わざるを得ません。
動物福祉に関心がない方にとっては、平飼い卵とはなんのことかもわからず、ただ単に購入な卵として捉えられてしまう可能性があります。これは消費者だけでなく、小売業者の方も同様だと思います。
そして結果として、市場が拡大していかないという悪循環があるように感じます。
これの悪循環を打破するのがこの記事の目的でもあります。
次に生産者側の問題を考えます。
卵にとっての一番の価値はおそらくその栄養素を考えたときのコストパフォーマンスだと思います。だから、安い値段で良いものを作ろうという報告に競争が激化してきた背景があると思います。
その結果、省スペースで大量生産が可能となるバタリーケージが生まれたのだと思います。また、ケーキやパンを廉価で一般大衆が買えるのは自分たちが低価格で卵を流通させているからだという自負もあるかもしれません。
あとは、消費者がケージフリーの卵を求めているかどうかわからないということが、生産者にとってバタリーケージを脱却できない原因になっているはずです。
私は、現在の養鶏農家の方の中にもバタリーケージを廃止したいと思っている人は少なからずいると考えています。ただ、失敗したときのリスクを考えて、動けていないだけだと思います。
ただでさえ養鶏業者は、鳥インフルエンザなんかのリスクを背負っている上に、それ以上のリスクは背負いたくないのが実情でしょう。
以上のように、消費者側と生産者側から考えてみても、現状の日本ではバタリーケージからケージフリーに移行する土台がまだ弱いのかなと思わざるを得ません。
そしてそれを解消するのは消費者の選択にあります。
だから消費者から良いサイクルを作りましょう
上述しましたが、消費量の約50%が家庭での使用です。
実はマクドナルド等の外食産業よりも一般家庭の消費量の方が多いのです。
だから、まず我々消費者がケージフリーの卵を選んで食べましょう!
そして、養鶏業者の方にケージフリー卵のニーズあることを伝えていきましょう。そうすることが、養鶏業者の方が勇気を持ってバタリーケージを廃止するという決断の大きな力になると思います。
次に卵売り場に行ったときには、安い卵に飛びつくのではなく、どのような生産方式が取られているのか、気にしていただけると嬉しいです。
関連HPについて
『ケージフリー 卵』とかで検索すれば色んなHPが出てきますので、ここまで読んだ内容じゃ物足りない!という方がおられましたらぜひ調べてみてください。
それらの中にはショッキングな画像が出てくる場合もあるので注意する必要がありますが、個人的には日本の鶏の現状を知るためには知っておいていただきたい内容でもあります。
そこで私が、数あるHPの中でも非常にわかりやすいと思ったブログを紹介しておきます。(ほんの少しだけショッキングな画像があります。)
スーパーのヤオコーさんが平飼い卵を陳列してくれました!!!2016年追記
スーパーにいってこれほど嬉しかったことはないです。
以前よりスーパーのヤオコーさんのとある店舗に、HPのお客様の要望みたいなところを通して平飼いの卵を置いてくださいとお願いしていました。
メールで要望を出させて頂いていたんですけど、お忙しいのかなかなかお返事をもらえなかったんですよね。
結局返事はもらえずそんなもんかーと思っていたのですが、ある日突然、卵コーナーに平飼い卵が陳列されていました!多分、ちっちゃく叫んだと思います。あんなにスーパーに行って嬉しかったことはなかったですし、あんなにスーパーで驚いたこともなかったです。
ちなみに2017年10月現在も販売を続けてくださっています。
本当に感謝しています!ヤオコーさんありがとう!!!
ちなみに要望メールには『アメリカのウォルマートが平飼い卵の取り扱いをやめるとの指針を出しました(最初のリンク)。ヤオコーさんもこの世界的な流れにあらかじめ乗っておく方が特ですよ!』くらいのことは書きました!ちょっとやらしい感じもしますが、本音でもあります。参考にしてみてください。
卵の紹介!!!
で、その置いていただいた平飼い卵がこちら!!!
農林水産大臣賞受賞だそうです。
こういう言い取り組みに賞を与える農林水産省、グッジョブです。思いっきり陽を浴びて、しっかり食べてよく運動する鶏による卵です。
左下にちっちゃく1坪(約二畳)に15羽のゆったりスペースと書かれています。いいですねー。
容器の内装にまで凝っております。
美しい。もちろん美味しいです。
あいだのたまごって???
長野県の信州たまご山ランドさんが販売する卵です。
そして、その場で卵かけご飯等が食べられるたまごの駅というものも運営しています。
この中に鶏たちの写真もあるのですが、本当に広々としたところで飼育されているのがわかります。
また、卵かけご飯などもその場で食べられるみたいです!!
こんな風に、ここのサイトを見ているのが楽しくてウロウロしていたんですけど、ものすごいものを発見しました。
!!!
アニマルウルフェア(=動物福祉)の文字があるじゃないですか!!!
しかも内容も凄くわかりやすい!!!
というか、養鶏所の方から見たアニマルウルフェアが書かれています。
放し飼い平飼いの鶏舎で飼育することによりアニマルウェルフェア AnimalWelfare(動物福祉:快適性に配慮した家畜の飼養管理)を目指しています。1960年代に英国で提起されました「5つの自由」を中心にこの概念が普及し、その後EU指令として規定され、各国が法令・規則を制度化しました。 「5つの自由」は①飢餓と渇きからの自由②苦痛・傷害・疾病からの自由③恐怖・苦悩からの自由④物理的・熱からの自由⑤正常な行動が出来る自由の観点ではかられています。 そのなかで①から④は今までの飼育方法でも飼養管理の中で解決できますが、⑤の「正常な行動の自由」のうち鶏は砂浴びや自由に歩行できる行動欲求が強いとされていてその行動を満足するために従来のケージ鶏舎ではその条件を満たすことが出来ません。 (あいだのたまごHPより)
最後の青字で書いた部分ってやはり養鶏業者さんならではの視点だと思います。やっぱり養鶏業者さんも鶏のことが好きな人が多いと思うんですよ!
だから繰り返しますが、平飼い卵のニーズがあることを消費という形で伝えていかなければならないと思います。
また、こんな風に鶏のことを思ってあげれている養鶏業者さんから卵を買いたいと思いますよね!
ちなみに、信州たまご山ランドさんの生産能力は以下の通りで、平飼い飼育がすべてではありません。(信州たまご山ランドHPより)
2011年10月現在
【成鶏】約19万羽(約120日令で導入・約530日令で親メス出荷)
【平飼鶏舎】約5万5千羽
【ケージ鶏舎】約13万羽
【育雛鶏舎ケージ】約3万5千羽(43日令から約120日令まで)
約25%が平飼い卵です。日本の平飼い卵の比率の2倍以上です。
リスクヘッジのためにケージ鶏舎も置いているのかもしれませんが、どんどん平飼い鶏舎の比率が大きくなっていってほしいですね。
YOU TUBEに動画もあったのでこちらもご参照ください。
広い施設で飼育されている鶏を見ることが出来ます。(グロい描写はありませんでした。)
また、こちらの卵は『らでっしゅぼーや』さんで買えるみたいです!
平飼いの商品検索結果一覧 | らでぃっしゅぼーや 有機野菜・無添加食材の宅配ネットスーパー
長野県が遠かったり、スーパーに置いてもらうのに時間のかかりそうな方は是非こちらも検討してみてください。
個人的には通販は個人で完結してしまうので、スーパーに置いていただいていろんな人の目にとまるようにしてもらう方が日本全体の動物福祉を考えると良いのではと思います。もちろん、個人の動物福祉に対する熱量も異なりますので、無理のない範囲で平飼い卵の消費に取り組んでもらえれば私としては非常に嬉しいです。
まとめ
平飼い卵やケージフリーの卵について少しでも理解が深まっていただければ嬉しいです。
繰り返しますが、日本では90%がバタリーケージ産の卵です。私はこの比率を少しでも下げて、平飼い卵の比率を上げていきたいと考えています。そしてほんのすこしでも鶏たちに快適な環境で生活してほしいと思っています。
ただ、やはりそのためには私個人の力では限界があります。だから、現状を知ってもらうことで皆様の関心を引き起こして、皆様にも平飼い卵を選択してほしい。
そのような気持ちから今回の記事を書きました。
そして、後半は実際にスーパーマーケットのヤオコーに平飼い卵を置いてもらえた経験も書きました。自分で言うのもなんですが、要望を出すことで、スーパーも理解し陳列してくれ、そのことで私も得をし、スーパーに来られる人も平飼い卵というものに触れ、鶏も快適な環境で暮らせる。もしかしたら、養鶏業者さんもスーパーも儲けているかもしれない。
そう思うと素晴らしいと思いませんか?そのために、卵にすこし高い金額を出すことを私は全く惜しいと思いません。
小さい命に対する優しい気持ちと、彼らのための小さな取り組みが日本中で広がっていくことを心から願って、筆を置かせていただきます。