満月なのでご紹介します。

社会問題(特に動物問題)と読書のブログ

生き物が絶滅する確率は99.9%!!『わけあって絶滅しました。』は子どもにおすすめ!

1つの種、あるいはグループが地球上から永遠に姿を消すこと...それが絶滅です。
とてもひどいことのように感じますが、生き物の歴史をながめてみるとそうではないことがわかります。
動物たちが喜んで消滅していったわけではありませんが、大きな絶滅の後には、大進化を遂げる生き物がいるのです。
例えば、恐竜が絶滅したおかげで、鳥類や哺乳類は爆発的に進化しました。
大絶滅を乗り越えた生き物の中から、次の世代の動物が現れたのです。
私たちの祖先も、森がなくなって草原があらわれるという大事件でたくさんの類人猿が絶滅する中、それを乗り越えたものが人類になりました。
このように、絶滅は自然の仕組みの1つですが、

「自然が引き起こした絶滅」と、

「人間が関わった絶滅は」まったく別物。

なぜならば、人間による絶滅は次の進化した動物を生み出さないからです。
この本にはいろいろな動物の絶滅した理由が書かれていますが、1つとして同じ理由はありません。

この機会に、その違いを考えてみても良いかもしれません。

(はじめにより)

 

 

この本は彗星のごとく現れ、ほとんどの書店で平積みされている絶滅知らずの本です。

この本が売れている理由は2つあって、

「人は絶滅に興味があるから」と、

「説教くささがなく面白いから」です。

 

なぜ人は絶滅に関心が強いのかということを日曜日の朝から考えていたのですが、人は絶滅した生き物にロマンを感じ、絶滅した理由に特別な意味を見出したいからだと気付きました。

絶滅した生き物の生態や能力や見た目が特別であれば特別であるだけいいし、絶滅も誰にも見られず静かに滅んでいくのではなくて、何かイベントがあって滅ぶ方が良い。こんな気持ちがあるのでしょう。もちろん僕にもあります。

そしてこの『わけあって絶滅しました。』という本はそのニーズをバッチリ汲み取った本になっています。

 

プニプニすぎて絶滅したディッキンソニア

美しすぎて絶滅したブルーバック

ツノが豪華すぎて絶滅したションブルクジカ

好奇心で食べられて絶滅したグアムオオコウモリ

 

どれも僕たちが知りたい!と思うような絶滅の理由です。

 

そしてその紹介内容が面白いんですよ。

全部絶滅した動物たちの自分語りになっています。リョコウバトの紹介文はこんな感じです。

ヤッホー⭐︎平和のシンボル、ハトだよ!「どこにでもいそう」ってそれ当たってる〜。

だって一番多い時で50億羽も痛んだから。うちらが羽ばたくと空が暗くなって、羽音で会話ができないほどだったって。飛び去った後にはうんこが雪のように積もってたって。

ちょっと幻想的だよね♪

そんなわけで、うちらは食べ物を探してカナダとメキシコのあいだを行ったり来たりしてたの、そしたら人間がいきなり鉄砲でドキューンって!

数が多すぎたせいで、てきとうに売っても何羽かかならず当たってしまったの。

それで肉や羽毛目当てに、1日に20万羽も狩られるようになっちゃった!

うちらも増えすぎたと思うけど、人間もやりすぎだよね〜。

 

うん。説教くさくなくて、いい感じ。

過剰に悲しくなることを避けながらも、でもちゃんと絶滅の理由には向き合っています。

そして何より絶滅した生き物自身の自分語りにすることで、絶滅した生き物がかつて生きていたことを認識しやすくなっています。

 

amazonのレビューなんかを見ていると、「人が絶滅させておいて不謹慎な書き方をするな!」といった憤りの声もありましたが、子どもを対象としたこの本ではこの程度書き方が最も良いと思います。

悲しみに向き合うのは大人の仕事です。

筆者も絶滅、特に人がもたらす絶滅を憂いていることは、冒頭紹介したはじめにを読んでいただいてもわかると思います。

 

だからこの本は不謹慎でもなんでもなく、子どもに絶滅のことを知ってもらうきっかけになる素晴らしい本だと思います。

僕が親なら安心して買ってあげれる一冊です。

生き物に関心のある子どもにぜひ読ませてあげてください。読み聞かせてあげると一緒に笑えると思います。