【感想/SOSの猿】誰かのSOSをキャッチする。そんなお話。【伊坂幸太郎】
救急車のサイレンを聞いて、
誰かがどこかで痛がっている。
そんな悲しい気持ちになったことはありますか?
この小説は、そんな気持ちになれる主人公と孫悟空とエクソシストの物語です。
。。。
いい話が始まるかと思いましたか?
でも嘘じゃないんです。
そんなハチャメチャな小説なんです。
詳しいストーリーとか紹介するの苦手なのですっとばしちゃいます。笑
ネタばれもなしになるのでいいですよね?
さっそくこの小説のいいところですが、それは素朴な言葉の数々です。
めちゃくちゃな舞台設定にも関わらず、
エクソシストとか悪魔とかの単語が飛び交うにも関わらず、
素朴で優しい心の持ち主がたくさん登場します。
最初に書いた救急車のサイレンの話もそうです。
他にも、
「利害関係のない誰かが、『良くなりますように』と祈ることは、
誰かを助けたいと思うことは、ひどいことではないはずだからだ。
悪いことではない。」
「効果が無くても?」
「良い効果が無くても、悪い効果があるわけでもない。」
これは主人公と神父のやり取りです。
この言葉によって、主人公は無力な自分の願いも悪いわけではないと慰められます。
力強い言葉じゃなく、素朴な言葉が心に響くこともあります。
でもあんまり人気がないらしいです。この小説。
私は伊坂幸太郎の作品が好きで、よく読みます。
よく読みますが熱狂的ファンというわけではなく、
別に伊坂幸太郎にはこうあってほしいなんていう理想を抱いたりもしません。
ただ、ファンからの評判はいまいちみたいです。
おそらく、伊坂作品の特徴の
①複数の伏線の回収
②どこか余裕のある登場人物のユーモア
こういったものがあまり感じられないからではないかと思います。
伊坂幸太郎の作品ってたくさん読んでいると、
あーここが伏線になってクライマックスまでに回収されるんだなー
とかってなんとなくわかるのですが、
本作では回収されない伏線も多く、
それがファンになかなか受け入れられにくいのかなと思います。
ただ、この作品では他の小説ではなかなか見られないような
ストーリー構成とかが用いられていて、
伊坂幸太郎の引き出しの多さをまざまざと感じることが出来ます。
でも実際、この小説の作者が伊坂幸太郎である必然性はそれほど感じませんでした。
それほどまでに自分自身の個性を確立している伊坂幸太郎が凄すぎるのですが。
まとめ
上に書いたような理由から、
伊坂幸太郎ファンには特にお勧めできるような本ではありません。
でも人の素朴な優しい気持ちに触れたい人や、
目標に対して無力感を感じてしまった人に読んでみてほしいです。
そしてみんなが今よりも少しずつ、
誰かのSOSをキャッチできるようになれればいいなと思います。
過去にも伊坂作品のレビューをしていますので是非。