満月なのでご紹介します。

社会問題(特に動物問題)と読書のブログ

【今だから読みたい名作文学】星の王子様の解説をするオリラジの中田敦彦が素晴らしかった【しくじり先生】

普段テレビあんまり見ないんですけど、たまたま見たしくじり先生の新コーナー『今だから読みたい名作文学』がめちゃくちゃ面白かった。

 

オリラジのあっちゃんが、本好きじゃない人には敬遠されがちな名文学を紹介していくというコーナーで、初回はサン=デグジュペリの星の王子様が紹介されていました。

星の王子様は2015年現在、初版以来、200以上の国と地域の言葉に翻訳され、世界中で総販売部数1億5千万冊を超えたロングベストセラーである。

wikipediaより

 つまり世界で最も読まれている作品の一つです。

 

私自身は世界の名作は結構好きで、星の王子様も何年か前に読みました。

ストーリーもなんとなく覚えていましたが、あっちゃんも言っていたようにとらえどころのない作品という印象が強かったです。

 

ただ、この今だから読みたい名作文学というコーナーを見てもう一度読みたいと思いました。

それは非常に分かりやすいあっちゃんの解説があったからです。

 

一つは、寓話として星の王子様をとらえるべきということ。

星の王子様では、王子様は6つの星を訪れた後に地球に来ます。

その6つの星では、それぞれの星で独特な人に出会います。

・自分の体面を保つことに汲々とする

・賞賛の言葉しか耳に入らない自惚れ屋

・酒を飲む事を恥じ、それを忘れるために酒を飲む呑み助

・夜空の星の所有権を主張し、その数の勘定に日々を費やす実業家(絵本、新訳の一部ではビジネスマン)

・1分に1回自転するため、1分ごとにガス灯の点火や消火を行なっている点燈夫

・自分の机を離れたこともないという地理学者

wikipediaより

これらは人が陥りやすいものについての象徴ということでした。

詳しくは下の画像をご覧ください。

f:id:caffeyne:20161128223429p:plain

いわば、7つの大罪みたいなイメージです。

読む人の性格やこれまでの人生で、どの人に同感しどの人に嫌悪感を抱くのかということが全く異なります。

あっちゃんは自身のことを大様になぞらえていました。大物気取りの男は吉村だったかな。忘れちゃいました。

私が驚いたのは、学問が負のイメージを持っているということです。

今でこそ学問は推奨されるべき事柄ですが、すべての物事においてバランスが大切ということでしょうか。

 

話を星の王子様に戻しますがもうひとつのおもしろい解釈は、薔薇に対する解釈でした。

地球の砂漠に降り立った王子は、まずヘビに出会う。その後、王子は高い火山を見、数千本のバラの群生に出会う。自分の星を愛し、自分の小惑星の火山とバラの花を愛おしく、特別に思っていた王子は、自分の星のものよりずっと高い山、自分の星のバラよりずっとたくさんのバラを見つけて、自分の愛した小惑星、火山、バラはありふれた、つまらないものであったのかと思い、泣く。

泣いている王子のところに、キツネが現れる。悲しさを紛らわせるために遊んで欲しいと頼む王子に、仲良くならないと遊べない、とキツネは言う。キツネによれば、「仲良くなる」とは、あるものを他の同じようなものとは違う特別なものだと考えること、あるものに対して他よりもずっと時間をかけ、何かを見るにつけそれをよすがに思い出すようになることだという。これを聞いた王子は、いくらほかにたくさんのバラがあろうとも、自分が美しいと思い精一杯の世話をしたバラはやはり愛おしく、自分にとって一番のバラなのだと悟る。

wikipediaより

あっちゃんはバラとは愛情の象徴であり恋人のことだと述べていました。

そして運命の人にどのようにして出会うかということに話が展開されていきましたが、運命の人とは出会うわけではなく、その人に愛情を注ぎ、運命の人にしていく工程であると述べていました。

また、関根勉やミキティーは愛情の対象が恋人ではなく、子どもに向いていました。

 

やっぱり読む人によってとらえ方が異なるのが本のいいところで、それを深く掘り進めていく『今だから読みたい名作文学』のコーナーは素晴らしいと思います。

ただ、字を追っていくだけでは捉えきれない部分まで深く解説するのには通常の読書以上に労力が必要です。

それを実施するあっちゃんはやっぱり秀才だと思うし、それを短時間で学べるのは本当にいいチャンスだと思います。

 

こういうことをきっかけに本を好きになる人が増えてくれたらと思います!

すくなくともこのコーナーを見た人はきっと星の王子様が読みたくなったはずです!

私もあっちゃんの言っていたことを思い出しながら再読したいと思います!

 

来週もこのコーナーが続いてくれることを願ってやみません。

期待大です!

 

しくじり先生で紹介されていたのは岩澤さんの役だった気がします。

違っていたらすみません。

絵本 星の王子さま

絵本 星の王子さま

 

 

多分、一番メジャーなのはこちらの内藤さんの訳だと思います。

星の王子さま―オリジナル版

星の王子さま―オリジナル版

  • 作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,内藤濯
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/03/10
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 19人 クリック: 501回
  • この商品を含むブログ (307件) を見る
 

 

 

 続編も書きました。こちらも合わせてご覧ください。

caffeyne.hatenablog.com

 

動物の解放/この世界に溢れる種差別を知って欲しい。

2018年1月更新

 

絶対に読まなければいけないと思っていた本を読み終えました。『動物の解放』という本は1975年に初版が出版されて以来、世界におけるアニマルライツ運動の最大の画期となった本です。(ちなみに現代の状況に即して、今は大幅な改訂が加えられた2009年版が出版されています。)

この本がきっかけとなって多くの動物が救われてきたことは間違いありません。 特筆すべきところは、感情的ではなく論理的な倫理の要求から動物を解放すべきだと述べているところです。

この本について詳しく見ていきたいと思います。

 

 

f:id:caffeyne:20170104223307p:plain

 

ピーターシンガーという倫理学者

1946年オーストラリアに生まれる。

2名のアメリカ大統領を輩出したプリンストン大学の現教授。

専門は応用倫理学(倫理学の知識を利用して、倫理上の問題を提起・考察する学問)。倫理学者、哲学者と呼ばれることも。

ザ・ニューヨーカー誌によって「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、タイム誌によって「世界の最も影響力のある100人」の一人に選ばれたほどの人物。

 

シンガーは動物の解放の中で、ペットを飼っていたことは無く動物を溺愛したことは無いと述べています。

そんなシンガーが動物を救いたいと思うのは、感情の面からではなく倫理的・道徳的な観点からです。そしてそんなシンガーの立ち位置がよくわかるエピソードが本書にはちりばめられています。

そのうちの一つが、動物好きの女性に「動物に興味をお持ちではないのですか?」と質問された際のことで、以下のように答えています。

私は苦しみと悲惨の防止に興味を持っているのだということを説明しようとした。私たちは恣意的な差別に反対しているのであり、ヒト以外の生物に対しても不必要な苦しみを与えるのはまちがっていると考えているということ、そして私たちは動物たちが人類によって、無慈悲で残酷なやり方で搾取されていると信じており、このような状況を変えたいと思っていることを話した。

 

シンガーは抑圧と搾取に終止符を打たなければならないと考え、基本的な倫理原則の適応範囲はヒトのみに限られるべきではないと考えています。

 

動物の解放

シンガーがタイトルに解放という言葉を使ったことには意図があります。

それは、解放という名前を付けることによってその他の解放運動(本書では、例として黒人解放運動を挙げています。)と動物解放運動を同列に置き、動物の権利主張のための動物解放運動を促進することです。

先述したとおり、この本が動物の権利を向上させてきたことは間違いのない事実です。

しかしながらシンガーは本書の中で、他の解放運動と比較して動物解放運動には多くのハンディキャップがあることも述べています。

最初の、しかももっとも明白は障害は、搾取されているグループが自らの受けている扱いに対して、組織的な抵抗を行うことが出来ないという事実である。私たちは自らのために弁ずることのできないグループのために代弁しなければならない。

もし黒人たちが自ら立ち上がって要求することができなかったと仮定すれば、平等な権利を得るためにはもっと長い時間がかかっただろう、ということを考えてみれば、読者の皆さんにもこのハンディキャップがいかに深刻なものかわかっていただけるだろう。

動物解放運動の前途にとってさらに重要なことは、抑圧側(ヒト)のほとんどすべての成員が抑圧に直接関与しており、自らが受益者であることを知っているという事実である。

論理的に動物たちの置かれている立場と我々の立場を対比させ、その問題点を浮き彫りにしています。

また、別の場所でシンガーは動物解放運動のためには圧倒的な利他的な心が必要だと述べています。この辺りが人種解放運動などと比較して難しい部分です。

なぜなら、どれだけ動物を虐待したとしても、それらの不利益は全て動物たちが被ることとなり、他方で人が被る不利益はほとんどないからです。

 

動物虐待を維持するものは、無関心よりもむしろ無知である。

動物の解放の序文を紹介します。

2008年に何千万人ものアメリカ人が、夕方のテレビのニュースに登場した、あまり体調が悪くて歩けない牛が蹴られたり、電流を通じた棒でショックを与えられたり、目を棒でつつかれたり、フォークリフトで押しのけられたりして、屠殺され食肉加工されるために追い立てられれて行くところを描いた隠し撮りビデオ映像を恐怖と不信感を抱いて見つめた。 

これやその他の動物虐待隠し撮りビデオによって喚起された広範な嫌悪感は、米国における大規模で制度化された動物虐待を維持するものが、動物への無関心よりもむしろ無知であることを示唆している。

我々は、スーパーやレストランに並ぶ肉や卵がどのような生産工程を経ているのか、基本的には無知であり無知であるが故に無関心です。なぜならそれらの環境は消費者にはあまり目に見えないように巧妙に隠されているからです。

例えばスーパーで売られている日本の普通の値段の卵を産む鶏は、その生涯をA4のコピー用紙程度の場所で過ごしています。興味のある方はバタリーケージ等で検索してみてください。(ショッキングな写真が掲載されていることも多いので、それらを覚悟した上で検索していただければと思います。)

 

話が少しそれましたが、アメリカでの動物解放のエピソードから考えると、一度動物に対する虐待が目に触れさえすれば少なくとも無関心ではなくなることが示唆されているのです。好意的に解釈すれば動物福祉にこれまで興味のなかった方でも、知る機会さえあれば動物の解放の大きな原動力になりえるということです。

そして、これらのパワーを信じているのが一部の過激な動物愛護団体だったり、ショッキングな写真を掲載するHPなのだと思います。彼らの言い分もわかるので私は彼らを責めることはできませんが、『知ること』と『関心を持つこと』の間には少し隔たりがあると思います。

ここの溝を埋めるのが少しでも動物福祉を向上させたいと思う人々の役割だと思います。そしてそのためには過ぎた暴力は逆効果なのではないかと思うのが私の考えです。

『無知』を『関心』に持っていくために考え続ける必要があると思います。

 

種差別という言葉だけは知っていてほしい

本書において最も重要なキーワードは『種差別』という言葉です。耳慣れない言葉だと思いますが是非知っておいてください。

種差別とは『人』と『それ以外の動物』を種が違うという理由でのみ差別することです。

殺処分、実験動物、畜産、動物園動物、猟、毛皮。

そのどれらをとっても動物たちがおかれている立場は非常に苦しいものがあります。そしてその動物虐待の全ての根底に存在するのは種差別という概念です。

シンガーが本書の結論部分で述べていることを記載します。

本書の核心は、その属する種のみを理由として動物を差別することは偏見の一形態であって、これは人種に基づく差別が不道徳で擁護しえないのと同じように、不道徳で擁護しえないという主張である。

その生命に対する道徳的配慮は種や知性に依存するのではなく、その生命が苦しむ能力を持っているかどうかによって判断すべきだとシンガーは述べています。

そして、明らかに脊椎動物は苦しむ能力を有しています。

長い地球の生命史の中で、人類だけが苦しむ能力を進化させたなんてことはあり得ません。進化の系譜を辿っていけば苦しむ能力も喜怒哀楽も道徳観も人類よりも先に出現した動物によって発現したものです。それは科学の観点からも証明されている事実です。

同じ部分も異なっている部分もきちんと正視して動物たちへの理解を深めていくことが種差別撤廃の一助になると私は信じています。

 

おわりに

種における差別は撤廃し、動物を開放すべきだというのがシンガーの論理です。

動物福祉や動物愛護運動というと、かわいそうな動物を救いたいという思いや愛情をきっかけとすることが多いのではないかと想像しがちですがシンガーは違います。

(本書で私は)情緒や感情よりもむしろ理性に訴えてきたのである。私がそうしたのは、他の動物に対するやさしい感情や敬意の感情の重要性に気付いていなかったからではなくて、理性に訴える方がより普遍的で、うむを言わさぬものだからである。

私は同情と思いやりに期待するだけで、スピーシズム(種差別)のあやまりについて多くの人を説得することができるとは思わない。

 

シンガーの圧倒的に厳格な論理的・倫理的な動物解放の提唱は目を見張るものがあります。その論理の激しさ故に批判されることもあるようですが、動物解放運動に興味がある人にとって必読の書だと思います。

私が今回紹介したのはシンガーの論理のほんの一部で、シンガーの論理の展開や切り口に関してほんの少ししか紹介できていません。それでも、もし私の拙い文章でも興味を持っていただけた方は是非本書を手に取っていただければと思います。

 

動物解放運動や動物福祉にこれまでほとんど興味が無かった方もここまで読んでくださってありがとうございました。私からのお願いですが、どうかこの世界に種差別が溢れていることを知っていただき、何か一つでも、何か1ミリでも動物たちのことを思える行動をしていただけるとこれに勝る喜びはありません。

共に進んでいきましょう。

 

 参考文献 

動物の解放 改訂版

動物の解放 改訂版

 

amazonのレビュー欄にも、素晴らしいコメントが寄稿されています。

この本の理解の一助としてそちらもあわせてご覧ください。

 

また、私の尊敬する方も過去にこの本のことを記事にされております。

幅広い知識をもとにどのように動物解放運動が広がりを見せたのかということを非常に分かりやすく解説されています。

是非、こちらの記事も参考にしていただければと思います。

davitrice.hatenadiary.jp

 

 

【感想/ある小さなスズメの記録】小さな命と心を通わせることの素晴らしさ【クレア・キップス】

スズメという鳥がいます。

 

過去から現代に至るまで日本人だけでなく世界中で多くの人の目を楽しませてきた鳥です。

f:id:caffeyne:20161114214423j:plain

(都内にて撮影)

 

スズメって本当に物理的にも心理的にも身近な鳥です。

ですが、彼らと心を通わせたいと思ったことがありますか?

 

少なくとも私にとってスズメはあくまでもスズメであり、心を通わせたいとか思ったことはありませんでした。

 

でもやっぱりいるんです。

スズメと一緒に暮らし心を通わせるチャンスを手にした人が。

その人の名前はクレア・キップス。1890年イギリス生まれ。ピアニスト。

スズメとの暮らしを綴った『ある小さなスズメの記録』という本は世界中で愛されました。

 

今回はこの本を一人でも多くの人に読んでもらいたいと思い紹介します。

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 (文春文庫)

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯 (文春文庫)

 

 

内容紹介

第二次世界大戦下のイギリス。夫に先立たれた一人の老ピアニストが出会ったのは、一羽の傷ついた小雀だった。愛情深く育てられた雀のクラレンスは、敵機の襲来に怯える人々の希望の灯となっていくー。特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。世界的大ベストセラーの名作。(ある小さなスズメの記録内容紹介より)

1940年7月1日。キップス夫人は生まれたばかりの瀕死のスズメを拾い助けます。

なんとか一命を取り留めたそのスズメに発覚したのは右翼と左足の障害でした。

キップス夫人はこのことについて、『自身の安全を確保するのに必要な高さまで飛べる日が来ようとは思えなかった』と述べています。

ここから12年間に渡るキップス夫人と歌うことが大好きなスズメのクレランスの愛情に満ちた共同生活が始まります。

 

小さな命と心を通わせることの素晴らしさ

前にも似たような内容の記事を書きました。

哲学者とオオカミというタイトルの本のレビュー記事です。

タイトル通りオオカミと暮らすチャンスを手にした人の話です。

(ちなみにですが、私のブログで初めてスマートニュースに掲載された思い入れのある記事です。)

【感想/哲学者とオオカミ】オオカミと暮らすチャンスを手にした哲学者の話 - クジラの歌

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

 

 

今回紹介しているスズメの本と、前に紹介したオオカミの本には圧倒的な共通点があります。

それは、彼らにとっての世界は自分自身なのだと認識していること。洞察力の深さ

なによりそれらの小さな命に対する愛情の深さです。

 

空を飛べる羽があろうと(クレランスはほとんど飛べませんが)、鋭い牙があろうと、彼らを愛する人がいない限り人間社会で生きていくことは難しいんです。

人間社会ではスズメもオオカミも同様に小さい命なんです。

 

そういった命を愛することの素晴らしさをこれらの2冊の本は教えてくれます。

これらの本では動物たちの喜怒哀楽はもちろんのこと、彼の持つ尊厳や嫉妬心までもが非常に細やかに描かれています。

 

多くの人にとって、スズメやオオカミと過ごすチャンスはあまりありません。

だからこそ本を通じてでも小さい命たちの想いを感じてみてほしいんです。

 

そうすることで、自分より弱い命たちをどのように共存していくべきかということを考えてほしいです。

そうすればきっと人を含めた多くの生き物に対してきっと優しくなれるはずです。

そういう人が増えてほしいと思っています。

 

鳥に関係する記事紹介

  ・過去書いたカラスの記事。

caffeyne.hatenablog.com

 ・鶏に関係する記事

caffeyne.hatenablog.com

caffeyne.hatenablog.com

今、6度目の大絶滅が起きているということを知っていますか?種が絶滅してはいけない理由を考える。

考えたことがありますか?

なぜ動物は絶滅してはダメなのか。動物を絶滅から守らないとダメなのか。

 

そのことを考えていきたいと思います。

 

[目次]

 

①一つの種が絶滅すれば生態系に計り知れない影響を及ぼすということ

これよく言われますよね。

ただ、それってその種の数が多い場合の話で、その種の絶対数が少なすぎる場合には適応できない考え方だと思っていました。

でも勉強すればそれに対する反例はありました。

キーストーン種という概念です。

キーストーン種(英: Keystone species)または中枢とは、生態系において比較的少ない生物量でありながらも、生態系へ大きな影響を与える生物を指す生態学用語。(wikipediaより)

身近なキーストーン種でいうとラッコがそうらしいです。

数は多くないけどラッコがウニを食べることで北太平洋沿岸の生態系をキープしていたらしい。

 

でも、これも生物が絶滅してはいけない理由にはならない。

なぜなら影響力が強いということを拠り所にするならば、影響力の弱い種は絶滅しても良いことになってしまうからです。

 

②ヒトに有用だから

進化の系譜をヒトがたどり直すことが出来ないから、一度絶滅してしまえばもう二度とその種には会えなくなる。

もし、その種が既知あるいは未知の病に対する有用物質を持っていたとすれば、その種を失うことはヒトにとって計り知れない損害になる。

 

こういう考え方も良く聞きます。その考え自体は確かにその通りだと思います。

 

 

しかし、この考え方では絶滅から種を守るのは人に有用な場合になってしまいます。

象牙のハンコのために象を絶滅から守る。(象牙のためには殺しながら)

酔い止めになるとされているクマの胆汁のためにクマを絶滅から守る。(胆汁のためには殺しながら)

毛皮のためにキツネを絶滅から守る。(毛皮のためには殺しながら)

 

極端かもしれませんが、私にはこういう考え方に聞こえてしまいます。

 

現在のところ、苦しみを感じないと考えられている植物や微生物などに対しては有用だからという考え方もあってもよいと思います。(この考え方も科学が進めば反例が出てくるかもしれませんが。)

でも、ヒトと起源を同じくする動物たちに対して『有用だから』という考え方で絶滅から守るというのはあまりに寂しいと思います。

 

現状の私の考え

こういうことを考えていると、なぜ生物は絶滅してはダメなのか。なぜ他種を絶滅から守ろうとする人がいるのか。

そう聞かれると私は多分悲しいからとしか答えることが出来ないと思います。

 

でも、それって説明になっているのかどうか。

もう少し理解を進めていく必要があると思いました。

 

2016年11月7日追記。

色んな方にお言葉を頂いて、なんとなく一つの答えが見えてきました。

それは『生物が絶滅してはいけない理由は、その他の種に有用である可能性があるから』です。

ヒトだけに有用と考えるのではなく、種全体に有用な可能性があるという考え方は私にとって受け入れやすいものでした。

 

例えば、絶滅しかかっているある植物がヒトには有用じゃなくても、イヌの病気に有用であれば絶滅させることは損害だと思います。。

例えば、野生の象の糞がその他の動物の病気を治すのであれば、象は絶滅から守るべきです。

こじつけかもしれませんが、私はこうやって自分を納得させることにしました。

そして、全ての種が何かしらの可能性を持つという考えから全ての種は絶滅から守るべきなのではと考えられます。

 

実際に、2015年にノーベル生理学医学賞を受賞した大村智教授がある生物の成分がヒト以外の他の生物に有用であるという研究実績を残されています。

大村 智 博士と米国メルク社に在職していたウィリアム・キャンベル博士は、土壌から分離された微生物から、寄生虫(線虫類など)に有効なエバーメクチンを発見しました。 

エバーメクチンは、1981年から動物薬として販売され、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌなどの獣医学領域で寄生虫駆除に用いられています。 この薬剤の効果は、例えば日本におけるイヌのフィラリア症(犬糸状虫症)の場合、フィラリアの予防と駆除に著効を示し、使用前の時代と現在では犬の寿命が2倍以上に延びました。(北里大学HPより引用)

 

この研究も放線菌が絶滅していたら為し得なかった研究です。

こういうことがあるから種は絶滅してはいけない。

今はこう思うようになりました。もちろん、悲しいから寂しいから種が絶滅してほしくないという優しい気持ちが最も尊いものだと今でも考えています。

『大村智物語』という本がエバーメクチンがどのような背景で発見されたのか、といったことや、大村智教授の人となりが非常に分かりやすく描かれていました。

関心のある方は是非読んでみてください。

 

 

今、地球では6度目の大絶滅を迎えているといわれている。

絶滅は現在進行形で加速度的に進行しているといわれていることを知っていますか?

是非、下に紹介する記事を読んでみてください。

natgeo.nikkeibp.co.jp

この5億年間で、地球上の生命は「5大絶滅」と呼ばれる、5度の大量絶滅を経験した。気候変動、氷河期、火山の噴火。そして、6500万年前にメキシコ湾に落下し恐竜をはじめとする多くの生物を絶滅させた隕石――絶滅のきっかけとなった原因はさまざまだ。そして、今、私たちは6度目の大量絶滅に直面しているかもしれない。(記事より引用)

現在のペースのまま絶滅が進めば今後数百年間で動物種の4分の3が絶滅するとの研究が発表されたとことです。

そして、今回の絶滅はヒトが引き起こしているものだとも。

 

こんなに悲しいことはないと思います。

ヒトが引き起こしているならば、人が解決できることもあります。

 

今を生きるヒトは、もっと絶滅ということに対して真摯に考える必要があるのではないかと思いました。

 

人類が大量絶滅を生き延びたとしても、多くの生物種が失われた世界で生きていきたいですか? あるいは、私たちの子孫が、そうした世界で暮らしてほしいと思いますか?(記事より引用)

 

私はそんな世界は絶対にいやです! 

 

きっとこの記事を読んでくださっているあなたもそんな世界は望んでいないと思います。

だから、そのために小さなことでも少しずつ取り組んでいきませんか?

 

参考文献

途中に紹介したニュースで話をしてくださっている方の著書『6度目の大絶滅』。

書店で見たかぎり非常に分厚い本でしたがいつか必ず読むと決めています。 

 

関連記事

【絶滅危惧種×ポケモン】現実世界で絶滅の危機にあるポケモンのモデル動物を6種紹介します。 - クジラの歌

 

【TED紹介】ポケモンのスリープのモデルになったバクという動物が絶滅危惧種って知ってますか? - クジラの歌

 

明日からできる!環境や動物たちのために簡単にできる能動的なこと - クジラの歌

【感想/異端のススメ】同質社会においては意識改革が一つのキーワードになると思う。【小池百合子、林修】

個人的にというか、東京都の動物殺処分ゼロを目指している小池百合子さんに興味があって、ものすごく期待もしています。

だから、築地市場の移転とかどうでもいいので一刻も早く小池百合子さんが理想とする東京都の姿を描いもらいたいと思います。

 

とはいえ、小池百合子さんがどんな人か知りません。

知らない人を応援するということは難しいし、正しく応援できるのかわからなかったので本を読みました。

なんか面白そうだったので、『今でしょ!』の林先生との対談【異端のススメ】を読みました。

 

異端のススメ

東大出身の塾講師の林修。

日本の大学を中退後、1970年代にカイロ大学を卒業した小池百合子。

 

異端たる二人が社会問題を論じ、夢を語り、自身の過去をさらけ出します。

 

本書は2013年に出版されたものであり、小池百合子さんが今掲げる動物殺処分ゼロというところに直接結びつくようなことは発見できませんでしたが、なんとなく見えた部分もあったので紹介したいと思います。

 

それでは、なぜ異端がすすめられているのか。まずその大前提の部分を紹介します。

 

世界の中でも高度のホモジニアス、同質社会の国、日本

ホモジニアス、同質社会。

一言で言うと、他の人と同じであることで心の安寧を見出すことです。

同質性が戦後日本の高度成長を牽引してきた。「あなた、お隣はテレビをお買いになったのよ。うちは?」「車、ピアノ・・・」という具合である。バブル現象もしかりである。皆と同じことをしていれば安心、という集団心理的現象である。

日本人ってそうみたいです。出る杭は打たれるとか言いますしね。レールを外れるという若いブロガーさんに辛辣な反応が多かったのも一つの例になりえるのかなと思います。

 

でも、その同質性だけで良かった時代は終わったとのことです。

『人と違う一歩を踏み出す勇気が日本を動かすかもしれない。』小池百合子

『この厳しい時代に合って、自分と向き合い、進むべき道を考えるにあたって、自分らしさを活かしやすいブルーオーシャンを探すべきではないか。』林修

 

すなわち異端を勧める理由は、同質性からの脱却が必要だと考えているからだと思います。

 

意識改革

そして、小池百合子さんが考える同質性からの脱却において重要なキーサードは『意識改革』なのだと思います。

 

小池百合子さんがこれまで行ったことの一つが「クールビズ」です。

真夏にギラギラと照り返しが来る道をネクタイとジャケットを着こんで汗を流しながら営業活動をしている人たちを気の毒に思ってきたとのことであり、その意識を変えたいとの思いからクールビズを実施したとのことでした。

次に狙っているのは働き方の意識改革で、残業ゼロを狙っているとのことです。

これらは、全て意識改革で行う。制度や予算の問題ではないと言い切っています。

 

これらから考えると、同質社会において何かを変えるために必要なことの一つが『意識改革』なのかもしれません。

 

殺処分ゼロに向けて

小池百合子さんは動物殺処分ゼロにむけてまず教育から行っていきたいと述べています。

教育とはまさに意識改革でしょう。

ただ、教育における意識改革は時間がかかります。

また、個人的には今の負の遺産を子どもたちに生産させるのもちょっと違うかなと思っています。今すぐにでも解決すべきだと。

でも、子どもを教育して親の意識も変わるならば大いに意味があるとも思います。

 

これからどんな意識改革が行われていくのか、注目していきたいと思います。

 

参考

紹介した本

異端のススメ

異端のススメ

 

 

大ベストセラーの嫌われる勇気も同質社会を考える上で役に立つと思います。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

 

 

前に書いた記事。

caffeyne.hatenablog.com

子どもにおすすめの生き物図鑑No.1はココリコ田中が書いた生き物が見ている世界!!!

動物が大好きで有名なお笑い芸人ココリコ田中と日本のインディージョーンズと呼ばれている長沼毅教授(広島大学)がコラボした図鑑がめちゃくちゃ斬新でとてつもなくおもしろいです!

 

その内容とは!?

 

生き物たちが見ているが見ているだろう世界を、科学の知見を駆使して描写したおそらく前例のない図鑑です。

 

コンセプトがめちゃくちゃおもしろくないですか?

なぜそのコンセプトに至ったのかというこのについてココリコ田中が前書きで語っています。その内容が本当に素晴らしいのでほとんど引用させて頂きます。

突然ですが、僕は生き物が大好きです。好きで好きでたまりません。その容姿、生態、能力、それぞれに魅力があり、魅力が無い生き物なんていないと思っています。

そんな生き物が大好きな自分が、以前からずっと気になっていたのが、「生き物たちにはこの世界はどのように見えているのか?」ということでした。

中略

イヌの目を調べていき、少しずつ色んなことがわかっていくと、イヌだけにとどまらず、そのほかの生き物の見ている世界もしりたくなり、それをまとめた本をつくれないだろうか?と思うようになりました。

中略

そしてそこで(勉強して)感じたことは「どう見えているかは断言できない」ということです。あたりまえのことですが、イヌにどのような世界が見えているのかインタビューすることはできません。もちろんネコにもキャットフードがどのように見えているのかはインタビューできないのです。なので、今回は、ヒトの目のデータを参考に、それぞれの生き物の目の構造や視細胞、視野などを調べ、「ヒトと比べてこう見えているのではないか?」を僕なりに絵にしてみました。

とはいえ、やはり誰も見たことが無い世界なので、もしかしたら全然違っているのかもしれません。先々、もっといろんな研究がされて、「イヌの見えている世界、全然ちがうやん!」とか「トンボの見てる世界もこんなんじゃない!」となるかもしれません。しかし今現在、わかっている範囲の中での生き物たちが見ている世界をどうしても形にしたく、このような本を出すことにしました。

まだ誰も見たことが無い、‘‘こう見ているんじゃないかな?という世界’’をのぞいて、おどろいたり、新たな発見をしてその生き物に興味をもっていただけたらうれしいです。

田中直樹

(生き物が見ている世界より引用)

 

僕の想いも田中直樹さんとほとんど同じで、色んな生き物に興味を持ってほしいと思っています。

そして、この本は間違いなく動物に興味を持つための一助になると確信できます。

図鑑をヒトよりたくさん買ってきたわたしが言うのだから間違いないと思います。

 

そして肝心の内容はこんな感じ。

f:id:caffeyne:20161030180058p:plain

これは大きいイラストがゴールデンハムスターが見ているだろうという世界のイラストで、右下のイラストが我々ヒトが見ている世界のイラストです。

 

こんなに違うんです!

ハムスターの世界は白黒なんです!

 

もちろん、ハムスター以外にもライオン、シマウマ、モグラ、イヌ、ネコ、イルカ、クジラ、ワシ、クジャク、チョウ、トンボ、イグアナ等30種以上の生き物の見えているだろう世界が収録されています。

 

めちゃくちゃ面白い!

 

モグラは全然目が見えていないし、イグアナは右目で見る世界と左目で見る世界が繋がっていないし。

クジラが世界をどんなふうに見ているかって想像したことがありましたか?

想像したことが無い人はぜひ想像してみてください。そして本書を手に取ってみてください。きっと新しい発見があるはずです。

 

そしてその想像を是非お子さんとも共有してみてほしいんです。絶対に面白いので!!!

 

そして他の生き物を知ることでヒト自身のこと見つめ直すことが出来ると思います。ヒトは目に頼って生きていると言われますが、こんなにヒトの目ってすごかったんだって気付かされるはずです!

間違いなく芸人としての仕事の枠組みを超えた素晴らしい生き物図鑑です。

 

子どもの頃にこの本が家にあればきっと感受性豊かな子どもに育つと思います。他者が見ている世界を想像するということの訓練になるはずです。本気でそう信じられるような内容になっています。もちろん大人も楽しめる図鑑なので是非手に取って頂ければと思います!

まちがいなく今、自信を持ってお勧めできる図鑑No.1です!

ココリコ田中×長沼毅presents 図解 生き物が見ている世界

ココリコ田中×長沼毅presents 図解 生き物が見ている世界